Ⅰ. ニューヨークの言語多様性と言語消滅

[1]~[20] 空所補充解説

(1) 3. houses (抱えている/住まわせている)

  • 正解の根拠: 文脈は「今日のニューヨークは、他のどの都市よりも多くの言語を抱えている」。場所としてそれらを含んでいるという意味で houses が適切。
  • 誤答解説:
    • heralds (到来を告げる): 文脈に合わない。
    • hinders (妨げる): 文脈と真逆の意味になる。

(2) 2. along (~に沿って)

  • 正解の根拠: 116丁目に「沿って」言語が並んでいるという地理的描写。
  • 誤答解説:
    • among (~の間で): 道路を表す名詞(116th Street)に対しては不自然。
    • about (~について/およそ): 場所を示す前置詞としてここでは不適。

(3) 1. elements (要素)

  • 正解の根拠: 言語のあらゆる「要素」を深く掘り下げる(digging deep into)。
  • 誤答解説:
    • ailments (病気): 文脈不明。
    • ornaments (装飾): 言語学的調査の対象として不適。

(4) 1. representatives (代表/典型)

  • 正解の根拠: ある言語ファミリーの最後の「代表例」として残っている話し手。
  • 誤答解説:
    • figures (数字/人物): 意味が広すぎる。「代表」というニュアンスが弱い。
    • delegates (派遣団/使節): 政治的・組織的な代表を指すため、言語の例としては不適。

(5) 2. might (~かもしれない)

  • 正解の根拠: 具体例を挙げる際の推量。「それは節の繋ぎ方かもしれないし、あるいは…」という並列構造。
  • 誤答解説:
    • did / 3. should: 文脈上、可能性を列挙している箇所であり、断定や義務は不適。

(6) 3. till (~まで)

  • 正解の根拠: 20世紀初頭「まで」多様化が進んだが、1924年の移民法でそれが止まったという時系列の転換点。
  • 誤答解説:
    • by (~までに): 完了の期限を表すが、ここでは継続していた状態の終点を示す till が自然。
    • on: 文法的に不適。

(7) 3. radical (過激な/極端な)

  • 正解の根拠: 1924年の移民法により、それまでの無秩序で急速な(過激な)多様化が落ち着いた。「少し過激でなくなった(=落ち着いた)」という意味。
  • 誤答解説:
    • rational (合理的な): 多様性が「合理的でなくなった」とすると文意が通らない。
    • sparse (まばらな): 多様性が「まばらでなくなった(=密になった)」とすると、移民制限の事実と矛盾する。

(8) 2. static (静的な)

  • 正解の根拠: 1950年代は特定のグループが支配的で、構成が変化しない「静的」な時代だった。直前の「多様性が減った」流れを受ける。
  • 誤答解説:
    • strategic (戦略的な): 文脈に関係がない。
    • stimulating (刺激的な): 多様性が減った時代を指すので不適。

(9) 3. intake (受入数)

  • 正解の根拠: 移民の「受入数」が歴史的低水準になった。
  • 誤答解説:
    • uptake (摂取/理解): 物質の取り込みや理解度を指す。
    • outtake (除外部/NG集): 逆の意味に近い。

(10) 3. waves (波)

  • 正解の根拠: 移民の流入を表す定型的な比喩表現(waves of immigration)。
  • 誤答解説:
    • swirls (渦) / 2. splashes (しぶき): 移民の集団移動を表す際には使わない。

(11) 1. settled (定住した)

  • 正解の根拠: ベトナム人がチャイナタウンに「落ち着いた/定住した」。
  • 誤答解説:
    • sat (座った) / 3. stood (立った): 物理的な動作であり、「居住する」意味ではない。

(12) 1. effects (影響/効果)

  • 正解の根拠: 変化が早すぎて、その完全な言語的「影響」は見過ごされやすい。
  • 誤答解説:
    • affects: 動詞(影響する)として使われるのが一般的。名詞(感情)としては文脈不適。
    • efforts (努力): 文脈に合わない。

(13) 1. incorporating (取り込んでいる)

  • 正解の根拠: 都市は常に新しい文化を内部に「組み込んでいる」。
  • 誤答解説:
    • cooperating (協力している): 他動詞的に文化を目的語にとれない。
    • corporations (企業): 品詞が名詞であり不適(ここは現在分詞が必要)。

(14) 2. monoculture (単一文化)

  • 正解の根拠: 多様性(diversity)の対義語。世界中から多様な人を飲み込むが、結果として画一的な「単一文化」にして吐き出しているという批判的文脈。
  • 誤答解説:
    • confusion (混乱): 多様性が失われる文脈において、混乱よりは「画一化」が適切。
    • biodiversity (生物多様性): 文脈と真逆。

(15) 2. takes in (受け入れる)

  • 正解の根拠: 移民を「受け入れる」という動作。
  • 誤答解説:
    • takes on (引き受ける/呈する): 責任や様相などに対して使う。
    • takes off (離陸する/脱ぐ): 不適。

(16) 3. overworked (酷使された)

  • 正解の根拠: NPOがお金がない文脈。「使い古された/酷使された」録音機材を使っている。
  • 誤答解説:
    • counterproductive (逆効果の): 機材の修飾語として不自然。
    • underprivileged (恵まれない): 通常「人」に対して使う(経済的に貧しい等)。

(17) 2. come (come close: 迫る/匹敵する)

  • 正解の根拠: NYの言語数に匹敵するのはロンドンとパリくらいだ。「come close」はイディオム。
  • 誤答解説:
    • get / 3. go: "get close"(近づく)は物理的距離に使うことが多いが、数量的な匹敵には "come close" が定型。

(18) 2. likely (~しそうである)

  • 正解の根拠: 言語消滅の可能性が高いこと(are likely to disappear)を示唆。
  • 誤答解説:
    • scheduled (予定されている): 自然現象的な消滅に「予定」は不適。
    • eager (熱望している): 言語自体が熱望することはできない。

(19) 3. suppression (抑圧)

  • 正解の根拠: 言語の「抑圧」。直後の "stamping out"(踏み消す)や "shaming"(恥をかかせる)と並列のネガティブな単語。
  • 誤答解説:
    • succession (継承/連続): 文脈(言語消滅の要因)と逆。
    • suggestion (提案): 弱すぎる。

(20) 1. withstand (耐える)

  • 正解の根拠: 強い文化と言語を持つ人々は、社会的崩壊に「耐えうる」。
  • 誤答解説:
    • withdraw (撤退する/引き出す): 文脈に合わない。
    • wither (枯れる/しぼむ): 逆の意味になる。

[21]~[30] 内容一致解説

[21] マンシー語(Munsee)について

  • 正解 2: 残された時間は非常に限られている。
    • 根拠: "youngest in her seventies"(最年少の話者が70代)という記述から、消滅が間近であることがわかる。
  • 誤答解説:
    • 多くの若者が話している: 70代が最年少なので誤り。
    • すでに完全に消滅した: "few speakers left"(数人残っている)ので誤り。
    • 復活に成功した: そのような記述はない。

[22] "The big ones"(大きな言語)の例

  • 正解 4: French(フランス語)
    • 根拠: 文脈上、世界的に話者数が多い「大言語」の具体例が問われている。選択肢の中でCortés(人名)、West Africa(地名)、New York(地名)を除外すると、フランス語のみが言語。

[23] ニューヨークの言語状況の歴史

  • 正解 2: 当初から多数の言語が存在した。
    • 根拠: "as soon as the Dutch arrived... New York became a Babel of tongues"(オランダ人が到着するやいなや…バベルの塔(多言語)となった)。
  • 誤答解説:
    • 20世紀になって急に多様化した: オランダ時代(17世紀)からとあるので誤り。
    • 常に英語が唯一の主要言語だった: オランダ語や先住民の言語が混在していた。

[24] 1924年の移民法の影響

  • 正解 1: 都市の多様性を制限した。
    • 根拠: "diversity was becoming just a little less radical"(多様性が薄れた)、"shut the door"(ドアを閉ざした)。
  • 誤答解説:
    • 移民を促進した: 真逆。
    • アジアからの移民を優先した: "racist quotas"(人種差別的割当)により主に北欧等を優遇し、多様性を排除した文脈。

[25] "Babel in reverse"(逆バベル)の意味

  • 正解 1: 支配的な言語や慣習を取り入れることで文化的独自性が失われている。
    • 根拠: 聖書の「バベルの塔」は言語がバラバラになる話だが、「逆」とは言語が一つにまとまってしまう(同質化・単一化)ことを指す。
  • 誤答解説:
    • 言語がさらに分裂している: これは通常のバベルの状態。
    • 翻訳技術が向上している: 文脈に関係ない。

[26] Endangered Language Alliance(ELA)の財政状況

  • 正解 4: Allianceでの活動だけでは十分な収入が得られない。
    • 根拠: 言語学者たちが "make ends meet elsewhere"(他で生計を立てている)とある。
  • 誤答解説:
    • 政府から多額の援助を受けている: "small nonprofit", "money is tight" なので誤り。
    • 寄付金で裕福である: 同上。

[27] 共感(empathy)への言及理由

  • 正解 3: 多言語環境で育つことの利点の一つとして。
    • 根拠: "Being raised multilingual... possibly have an effect on one's capacity for empathy."
  • 誤答解説:
    • 言語学者の資質として: 文脈は「子供の成長」について。
    • 移民への同情を集めるため: 認知発達(cognitive development)と並列で語られているため、能力的な「共感力」を指す。

[28] ELAの主な活動

  • 正解 3: 消滅する前に言語を記録・保存している。
    • 根拠: "attempt to 'catch language'... before languages blend together and disappear."
  • 誤答解説:
    • 英語教育を施している: 逆(母語の保存)。
    • 政治活動を行っている: 政治的権利にも触れているが、主活動は「記録(recording)」。

[29] 言語保護の利点として言及されていないもの

  • 正解 3: 移民の増加(Increased immigration)
    • 根拠: 教育効果(Education)、人権(Human rights)、知識の保存(Knowledge)は本文にあるが、「言語を守れば移民が増える」という因果関係は述べられていない。

[30] "dropping a bomb on the Louvre"(ルーヴル美術館に爆弾)の意味

  • 正解 2: 取り返しのつかない文化的損失。
    • 根拠: 言語が消えることは、知識や芸術の宝庫を一瞬で破壊するようなものだという比喩。
  • 誤答解説:
    • 実際に美術館が攻撃される危険性: 比喩を文字通り受け取っているため誤り。
    • 芸術よりも言語が重要だ: 比較ではなく、同等の損失であることを強調している。

Ⅱ. デジタル・ゲリマンダーと情報受託者

[31]~[50] 空所補充解説

(31) 1. nudge (そっと促す)

  • 正解の根拠: 行動経済学用語。強制ではなく、選択肢を提示して望ましい行動へ誘導すること。投票行動を「促す」。
  • 誤答解説:
    • judge (判断する) / 3. grudge (恨む): 文脈不適。

(32) 2. With (~があって初めて/~があれば)

  • 正解の根拠: Facebookの協力「があって」、実験が可能になった/成功した。条件・付帯状況。
  • 誤答解説:
    • For / 3. To: 文頭で「~のおかげで」「~とともに」という文脈を作るには With が最適。

(33) 1. generic (一般的な/総称的な)

  • 正解の根拠: 特定の友人の写真が出るグループに対し、対照群には「一般的な(個別の要素がない)」メッセージが表示された。
  • 誤答解説:
    • genetic (遺伝子の): 綴りが似ているが意味が違う。
    • generous (寛大な): 文脈不適。

(34) 1. amounted to (~に達した/~に相当した)

  • 正解の根拠: わずかなパーセンテージだが、数としては多くの票に「なった」。
  • 誤答解説:
    • mounted (登った/据え付けた): amount to で一つの熟語。
    • counted (数えた): counted to とは言わない。

(35) 2. hotly (激しく/熱烈に)

  • 正解の根拠: "hotly contested election"(激戦の選挙)は頻出コロケーション。
  • 誤答解説:
    • hardly (ほとんど~ない): 意味が逆になる。
    • dryly (冷淡に): 不適。

(36) 3. beyond (~を超えて/~以外にも)

  • 正解の根拠: 自分のプロフィールに政党を書いているユーザー「以外」の支持政党も推測できる。
  • 誤答解説:
    • below (~より下) / 2. behind (~の後ろ): 文脈(範囲の拡大)に合わない。

(37) 2. flip (覆す/ひっくり返す)

  • 正解の根拠: 選挙の結果(outcome)を「ひっくり返す」。
  • 誤答解説:
    • clip (切り取る) / 3. grip (掴む): 選挙結果に対する動詞として不適。

(38) 3. contribute to (~に寄与する/一因となる)

  • 正解の根拠: 多くの変数が、表示されるコンテンツの決定に「寄与している」。
  • 誤答解説:
    • attribute (~のせいにする): attribute A to B の形をとる。自動詞的に attribute to とは使いにくい。
    • distribute (分配する): 文脈不適。

(39) 3. yield (産出する/もたらす)

  • 正解の根拠: アルゴリズムが、関連性の高い情報を「もたらす (yield)」のを助ける。
  • 誤答解説:
    • field (さばく/守備する): 情報を選び出す意味としては弱く、不自然。
    • wield ((権力などを)振るう): 情報を振るうとは言わない。

(40) 2. neutrality (中立性)

  • 正解の根拠: デジタル・ゲリマンダー(政治的操作)が危険な理由は、企業が実際には「中立性」を約束していないからだ(だから操作が可能)。
  • 誤答解説:
    • accuracy (正確性): 偏向していても情報は正確かもしれない。問題は「偏り(中立性の欠如)」。
    • partiality (不公平/えこひいき): 企業が「えこひいき」を約束していないのは当然だが、文脈は「公平であると期待されているが、実は中立を約束していない」という論理。

(41) 1. against (~に反対して)

  • 正解の根拠: SOPAという法案「に対する」抗議(protest)。
  • 誤答解説:
    • by / 3. for: 抗議の対象を示すには against

(42) 3. entry (記事/項目)

  • 正解の根拠: ブログの「記事 (entry)」。
  • 誤答解説:
    • entrance (入り口) / 2. entrée (アントレ/入場権): ブログの個別の投稿は entry と呼ぶ。

(43) 3. next (次の)

  • 正解の根拠: ロゴを変えるだけの抗議から、検索結果を変えるという「次の」段階へ進む。
  • 誤答解説:
    • last / 2. past: 未来への懸念を語っているため不適。

(44) 1. However (しかし)

  • 正解の根拠: ロゴの変更は目に見える(visible)。しかし、ニュースフィードや検索結果の操作は目に見えない(invisible)。この対比を示す接続副詞。
  • 誤答解説:
    • Therefore (したがって) / 3. Moreover (さらに): 対比関係ではないため不適。

(45) 3. tweaked (微調整される)

  • 正解の根拠: アルゴリズムや表示順位が、気づかれないように「いじられる/微調整される」。
  • 誤答解説:
    • squeaked (キーキー音を立てた) / 2. streaked (縞模様になった): 意味不明。

(46) 1. At the same time (同時に)

  • 正解の根拠: 企業の操作は危険だという議論に対し、「同時に」それを法で規制することにも問題がある(権利の衝突)という、別の視点を導入するディスコースマーカー。
  • 誤答解説:
    • In the long run (長い目で見れば): 即時的な対立概念の提示なので不適。
    • To start with (まず第一に): 議論の中盤なので不適。

(47) 2. see (see fit: 適切だと思う)

  • 正解の根拠: "as they see fit"(彼らが適切とみなすように)は慣用句。
  • 誤答解説:
    • know / 3. think: 文法的に as they think fit とは言わない(think fit もあるが see fit が定型)。

(48) 3. patients (患者)

  • 正解の根拠: 医師(doctors)と対になるのは「患者」。情報受託者(fiduciary)の概念を、医師と患者の関係(専門知識の格差と信頼関係)に例えている。
  • 誤答解説:
    • patience (忍耐): 名詞の意味違い。
    • parents (親): 医者とのペアではない。

(49) 2. foundation (根拠/基礎)

  • 正解の根拠: サブリミナル効果への規制には、パニックという「基礎/根拠」があった(たとえ科学的根拠が薄くても、社会的動機があった)。
  • 誤答解説:
    • fountain (泉) / 3. founder (創設者): 文脈不適。

(50) 1. scenarios (シナリオ)

  • 正解の根拠: "worst-case scenarios"(最悪の事態/シナリオ)は定型表現。
  • 誤答解説:
    • scenes (場面) / 3. sceneries (風景): 文脈(想定される事態)に合わない。

[51]~[60] 内容一致解説

[51] Ripple effect(波及効果)の意味

  • 正解 3: 小さな初期変化が、広範囲にわたる結果をもたらすこと。
    • 根拠: 6万人の直接的な影響が、友人を介して34万人の投票行動に繋がった事例から。
  • 誤答解説:
    • 水面の物理的な動き: 比喩を理解していない。
    • 逆効果になること: むしろ効果が増幅されている。

[52] デジタル・ゲリマンダーの定義に合う例

  • 正解 3: 検索エンジンが、自社の利益になる法律を支持する記事を上位に表示する。
    • 根拠: 定義は「政治的アジェンダのために情報を操作すること」。
  • 誤答解説:
    • ユーザーが自分で設定を変える: これはパーソナライズであり、ゲリマンダー(操作)ではない。
    • ランダムにニュースを表示する: 意図的な操作がない。

[55] 法的規制が "asking for trouble"(災いの元)である理由

  • 正解 3: 憲法修正第1条(言論の自由)の権利と衝突するから。
    • 根拠: 企業にも編集の自由(speech rights)があり、政府が「中立」を強制することは憲法違反になり得るというジレンマ。
  • 誤答解説:
    • 企業が倒産するから: 経済的理由ではない。
    • ユーザーが望んでいないから: 権利の問題であって、ユーザーの好みではない。

[56] 情報受託者(Information Fiduciary)に許されること

  • 正解 1: 自社のサービス内で広告を表示すること。 (注:解答速報によっては2の可能性もあるが、論理的には「通常のビジネス」は許される)
    • 根拠: Fiduciaryの概念は「利益相反」や「信認義務違反(勝手にデータを売る、政治操作する)」を禁じるもの。通常のビジネスモデル(広告)自体は否定されない。
  • 誤答解説:
    • データを第三者に無断で販売する: 明らかな義務違反。
    • 選挙結果を操作する: これを防ぐための概念。

[60] 著者の主張

  • 正解 3: デジタル・プラットフォームに対して「情報受託者」という新たな法的枠組みを適用すべきだ。
    • 根拠: 最終段落および全体を通して、現行法(独禁法や言論の自由)の限界と、信頼(trust)に基づく新たな義務の必要性を説いている。

講評

2015年度 慶應SFC 環境情報学部 英語

【全体概観】 本年度は「言語・文化」と「情報・法」という、SFC(湘南藤沢キャンパス)の理念を体現するような二大テーマが出題されました。単なる英語の読解力だけでなく、背景にある社会課題への理解が問われる良問揃いです。

【大問Ⅰ:言語多様性と消滅】

  • テーマ: ニューヨークにおける言語のるつぼ(Babel)の歴史と、消滅危機言語(Endangered Languages)の保存。
  • 特徴: "monoculture"(単一文化)や "Babel in reverse"(逆バベル)といった比喩表現の正確な理解が鍵でした。歴史的経緯(オランダ時代→1924年移民法→現代)を時系列で整理できていないと、空所補充で迷う構成になっています。
  • 難易度: 標準。ただし、選択肢の単語(heralds, suppression, radicalなど)は、文脈の中でのニュアンスを問うものが多く、辞書的な意味だけでは正解を選びにくい箇所がありました。

【大問Ⅱ:デジタル・ゲリマンダー】

  • テーマ: プラットフォーム企業による選挙介入(Digital Gerrymandering)と、新たな法的概念「情報受託者(Information Fiduciary)」。
  • 特徴: ハーバード・ロー・スクールのジョナサン・ジットレイン教授らの議論をベースにした、極めてSFCらしい出題です。「アルゴリズムによる操作」と「言論の自由」の対立という、現代社会のジレンマを扱っています。特に、法規制がなぜ難しいのか(憲法修正第1条との兼ね合い)を問う設問は、論理的な思考力を強く要求します。
  • 難易度: やや難。専門用語(fiduciary, gerrymandering)の概念理解と、後半の法的な議論のねじれ(規制したいが、規制すると権利侵害になる)を読み解く力が求められました。

【次年度以降への対策】 SFCの英語は「知的好奇心」を試しています。

  1. 学際的な語彙力: 言語学、法学、情報工学などの基礎的な概念(diversity, neutrality, privacy, algorithm等)を、英語で説明できるレベルまで定着させましょう。
  2. 論理構成の把握: 特に大問Ⅱのように「問題提起→既存の解決策の否定→新たな提案」という論文調の構成に慣れることが重要です。パラグラフごとの要旨を掴む訓練(パラグラフリーディング)が有効です。
  3. SFC的テーマへの感度: インターネットと社会、多文化共生、環境問題など、SFCが扱うテーマは頻出です。日頃からこれらのトピックの英文記事(The Economist, WIREDなど)に触れておくことを強く推奨します。