東大和文英訳の完全攻略:過去10年間の分析と必須構文30選

更新日時: 2025年8月20日 3:29

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東大和文英訳の完全攻略:過去10年間の分析と必須構文30選

序論:課題の解体

東京大学の入学試験における和文英訳問題は、単なる二言語間の流暢さを測るテストではない。それは本質的に、分析的解体と論理的再構築の能力を問う試験である。受験生に求められる第一のスキルは、複雑でしばしば文学的な日本語の文章から、その論理的・意味的な核を抽出し、それを明快で文法的に正しい英語へと再エンコードする能力である。

ここでの核心的な課題は明確である。すなわち、直訳は罠であるということだ。課題文は、その文体的複雑さや抽象性ゆえに、逐語的なアプローチを意図的に不可能にするような文章が選ばれている 。したがって、この問題で成功を収めるか否かは、二段階のプロセスを遂行できるかにかかっている。第一に、難解な日本語を、論理的に平易な日本語へと「翻訳」すること。第二に、その単純化された日本語を、信頼できる文法構造のツールキットを用いて英語に翻訳することである 。

「パラフレーズ」という至上命題:最重要スキル

このセクションでは、「日本語から平易な日本語へ」というプロセスを深掘りする。

分析 東大の和文英訳問題では、「直訳しにくい、普段英語を勉強している時には見かけないような日本語」が意図的に採用される 。これは、受験生が文章を解釈し、「英訳しやすい日本語に自分で解釈して言い換えてから英訳する」能力を試すためである 。この言い換え、すなわちパラフレーズ能力こそが、合否を分ける関門となるスキルである。

適用例 過去の出題(例えば小林秀雄の文章など )に着想を得た概念的な例を用いて、このプロセスを具体的に見てみよう。例えば、次のような一文があったとする。

「現在の行動にばかりかまけていては、生きるという意味が逃げてしまう」

この文章を英語に訳す前に、まず以下のように単純化する必要がある。

「目先のやるべきことだけを考えていると、人生の本当の意味を見失ってしまう」

この単純化された日本語であれば、"If we focus only on the immediate tasks before us, we will lose sight of the true meaning of life." のように、より直接的に英語に変換できる。

戦略的含意 このプロセスを通じて、受験生は文章の核心的な論理要素(例:条件、原因、結果、対比)を特定せざるを得なくなる。そして、その特定された論理構造こそが、どの英語の文法構造を選択すべきかを決定づけるのである 。この和文英訳問題は、言語能力の試験という体裁をとりながら、その実、

受験生の母語における批判的思考力と論理的推論能力を試す試験であると言える。日本語の文章を解体し、その論理的骨格を抽出する能力は、英語力以前に不可欠な前提となる。この事実は、東大和文英訳が、国語力と英語力を横断する、学際的な挑戦であることを示唆している。

第2部 基礎となるツールキット:英語表現の基本原則

30の必須構文リストを提示する前に、それらを適用するための普遍的な原則について概説する。これは、受験生に求められる能力の基礎水準を明確にし、後続のリストを、これらの原則を実践するための道具として位置づけるためである。

譲れない「主語-動詞」の核

主題優位の言語である日本語からの翻訳において、しばしば障壁となるのが主語の特定である。英語のあらゆる節において、明確な主語と動詞を特定、あるいは創出する必要性を常に意識しなければならない。

従属と等位の習熟

東大の課題文に特徴的な、長大で複数の要素を含む文章を処理するためには、関係詞節、副詞節、等位接続詞の戦略的な使用が不可欠である 。目標は、英語において過度に複雑な、あるいは冗長な悪文(run-on sentence)を避けることにある。

分詞と動格の力

分詞構文のような非定形動詞や同格表現は、日本語の従属的な節が持つ情報を、冗長な英語の節を作ることなく、洗練された形で凝縮するために極めて有効な手段である。

これらの基本原則の習熟なくして、後述する30の構文「兵器庫」は意味をなさない。構文はあくまで戦術であり、節の構築、主語と動詞の一致、句読法といった基本原則は、それら戦術を支える大戦略である。後者の失敗は、前者の価値を無効化する。したがって、本稿の構成は、まず基礎(第2部)を固め、その上で高度なツール(第3部)を提示するという教育的配慮に基づいている。

第3部 東大和文英訳の兵器庫:必須構文30選

序論:「構文ストック」の構築

このセクションでは、戦略的必須事項として「構文の兵器庫」という概念を導入する。複数の学習指針が、『ドラゴンイングリッシュ』や『英語の構文150』といった教材を用いて100から150の基本例文を暗記し、信頼できる文の「型」のストックを構築することの重要性を強調している 。本稿で提示する30の構文リストは、これらのパターンの中から、特に東大入試の要求に特化して厳選された、最も頻出かつ高収益なサブセットである。

必須構文マスターテーブル

以下の表は、学習と参照の便宜を図るため、30の構文を機能別に分類したものである。このアプローチは、文法知識を機能(例:「対比」を示したい)から検索可能にすることで、場当たり的な語彙の探索を、論理に基づいた体系的な構造選択へと転換させる。

表1:東大和文英訳のための必須構文30選

カテゴリー

構文名

主要機能

東大での重要度

A. 原因・理由

1. so... that...

程度の高い原因とその結果を示す

2. It is because... that...

理由を強調する

3. A is attributable to B

形式的な原因帰属を示す

4...., with the result that...

文脈上の結果を示す

5. now that...

現状を理由として提示する

6. on the grounds that...

論理的な根拠を示す

B. 対比・譲歩

7. While A..., B...

同時的な対比を示す

8. It is true that..., but...

一部を認めた上で反論する

9...., only to do...

予期せぬ否定的結果を示す

10. in contrast to...

明確な対比対象を示す

11...., whereas...

2つの事柄を対照させる

12. for all... / with all...

譲歩(~にもかかわらず)を示す

C. 条件・仮定

13. Were it not for...

反実仮想の条件を示す

14...., otherwise...

暗示的な否定的条件を示す

15. Assuming that...

仮定的な前提を示す

16. Provided that...

肯定的な条件を示す

17. whether A or B,...

いずれの場合でも成り立つことを示す

D. 強調・焦点

18. It is... that...

強調構文(分裂文)

19. What is important is...

擬似分裂文

20. Not only A but also B

倒置による強調

21. the very + 名詞

名詞を強調する

22. It is A, not B, that...

AをBと対比して強調する

E. 抽象化・名詞化

23. The fact that...

節を名詞として扱う

24. 抽象名詞を主語にする

無生物主語構文

25. make it possible for O to do

Oが~することを可能にする

26. enable O to do

Oに~する能力を与える

27. prevent O from doing

Oが~するのを妨げる

28. The question is whether/how...

疑問点を名詞化する

29. There is no denying that...

否定不可能な事実を提示する

30. A is defined as B

AをBとして定義する


必須構文30選 詳細解説

以下に、各構文の機能と、東大の過去問スタイルを想定した応用例を詳述する。

A. 原因・理由

  1. so... that...
    • 機能: 「非常に~なので…だ」と、程度の高い原因とそれに伴う結果を表現する。
    • 応用例:
      • 原文: その思想家の議論はあまりに緻密であったため、多くの追随者たちはその本質を完全には理解できなかった。
      • 単純化: 彼の議論は非常に緻密だった。その結果、多くの追随者は本質を理解できなかった。
      • 英訳: The thinker's argument was so elaborate that many of his followers could not fully grasp its essence.
  2. It is because... that...
    • 機能: 理由を強調する構文。「…なのは、~だからだ」というニュアンス。
    • 応用例:
      • 原文: 我々が伝統を重んじるべきなのは、それが過去の知恵の結晶であるからに他ならない。
      • 単純化: 我々が伝統を重んじるべき理由は、それが過去の知恵の結晶だからだ。
      • 英訳: It is because tradition is the crystallization of past wisdom that we should respect it.
  3. A is attributable to B
    • 機能: 「AはBに起因する」と、原因を形式的・分析的に示す。
    • 応用例:
      • 原文: 近代社会における疎外感の増大は、コミュニティの崩壊にその原因を求めることができる。
      • 単純化: 近代社会の疎外感は、コミュニティの崩壊が原因だ。
      • 英訳: The growing sense of alienation in modern society is attributable to the collapse of communities.
  4. ..., with the result that...
    • 機能: 前の文脈全体を受けて、「その結果として…」と結果を導く。
    • 応用例:
      • 原文: 都市開発は経済的利益を優先して進められ、結果として地域の文化的多様性が失われた。
      • 単純化: 都市開発は経済を優先した。その結果、文化的多様性が失われた。
      • 英訳: Urban development was promoted with priority given to economic benefits, with the result that the area's cultural diversity was lost.
  5. now that...
    • 機能: 「今や~なので」と、変化した状況を理由として提示する。
    • 応用例:
      • 原文: インターネットが隅々まで普及した今、情報の非対称性はもはや過去のものとなりつつある。
      • 単純化: インターネットが普及したので、情報の非対称性はなくなりつつある。
      • 英訳: Now that the internet has become ubiquitous, information asymmetry is becoming a thing of the past.
  6. on the grounds that...
    • 機能: 「~という理由で」と、判断や主張の論理的根拠を明確に示す。
    • 応用例:
      • 原文: その法案は、個人の自由を不当に制限するとの理由で、多くの市民から批判された。
      • 単純化: その法案は個人の自由を制限する。だから市民は批判した。
      • 英訳: The bill was criticized by many citizens on the grounds that it would unduly restrict individual freedoms.

B. 対比・譲歩

  1. While A..., B...
    • 機能: 「Aである一方、Bである」と、2つの事柄を対比的に示す。譲歩(「Aではあるが」)の意味も持つ。
    • 応用例:
      • 原文: 科学技術は我々の生活を便利にしたが、同時に新たな倫理的問題を生み出してもいる。
      • 単純化: 科学技術は生活を便利にした。しかし、新たな倫理問題も生んだ。
      • 英訳: While technology has made our lives more convenient, it has also created new ethical problems.
  2. It is true that..., but...
    • 機能: 「確かに~ではあるが、しかし…」と、相手の主張や事実を一度認めた上で、反論や別の側面を提示する。
    • 応用例:
      • 原文: グローバル化が経済成長を促進したことは確かだが、その恩恵がすべての人々に平等に行き渡ったわけではない。
      • 単純化: 確かにグローバル化は経済を成長させた。しかし、恩恵は不平等だった。
      • 英訳: It is true that globalization has promoted economic growth, but its benefits have not been distributed equally to all people.
  3. ..., only to do...
    • 機能: 「…したが、結局~しただけだった」と、期待に反する残念な結果を表す。
    • 応用例:
      • 原文: 彼は長年研究に没頭したが、結局は学界の主流から認められないまま終わった。
      • 単純化: 彼は長年研究した。しかし、認められなかった。
      • 英訳: He devoted himself to his research for many years, only to find it unrecognized by the academic mainstream.
  4. in contrast to...
    • 機能: 「~とは対照的に」と、明確な対比を示す。
    • 応用例:
      • 原文: 過去の世代が安定を求めたのとは対照的に、現代の若者は変化と自己実現を重視する傾向がある。
      • 単純化: 過去の世代は安定を求めた。対照的に、現代の若者は変化を重視する。
      • 英訳: In contrast to previous generations that sought stability, young people today tend to value change and self-fulfillment.
  5. ..., whereas...
    • 機能: 2つの節を結び、「…であるのに対して、~である」と対比を示す。
    • 応用例:
      • 原文: 都市部では人口が過密になっている一方、地方では深刻な過疎化が進行している。
      • 単純化: 都市は人口過密だ。一方、地方は過疎化している。
      • 英訳: Urban areas are becoming overcrowded, whereas rural regions are suffering from serious depopulation.
  6. for all... / with all...
    • 機能: 「~にもかかわらず」と、譲歩を表す。despitein spite of と同義だが、より文語的。
    • 応用例:
      • 原文: あれだけの才能がありながら、彼は自らの可能性を十分に開花させることができなかった。
      • 単純化: 彼は才能があった。しかし、可能性を開花させられなかった。
      • 英訳: For all his talent, he was unable to fully realize his potential.

C. 条件・仮定

  1. Were it not for...
    • 機能: 仮定法過去の倒置形。「もし~がなければ」と、現在の事実に反する仮定を示す。
    • 応用例:
      • 原文: 言語というものがなければ、人間は複雑な思考を共有することも、文化を継承することもできないだろう。
      • 単純化: もし言語がなければ、人間は思考を共有できない。
      • 英訳: Were it not for language, humans would be unable to share complex thoughts or pass down their culture.
  2. ..., otherwise...
    • 機能: 「…しなさい、さもなければ~」と、命令文や助言に続けて、それを実行しない場合の否定的結果を示す。
    • 応用例:
      • 原文: 我々は歴史から教訓を学ばねばならない。そうしなければ、同じ過ちを繰り返すことになる。
      • 単純化: 歴史から学ばなければならない。さもなければ、同じ過ちを繰り返す。
      • 英訳: We must learn lessons from history; otherwise, we will repeat the same mistakes.
  3. Assuming that...
    • 機能: 「~だと仮定すると」と、議論の前提となる仮定を提示する。
    • 応用例:
      • 原文: すべての人間が理性的に行動すると仮定した場合、社会はより効率的になるかもしれないが、同時に人間性を失うだろう。
      • 単純化: もし人間が皆、理性的に行動すれば、社会は効率的になるが人間性を失う。
      • 英訳: Assuming that all human beings act rationally, society might become more efficient, but it would lose its humanity at the same time.
  4. Provided that...
    • 機能: 「~という条件で」「~でありさえすれば」と、肯定的な条件を示す。ifon condition that に近い。
    • 応用例:
      • 原文: 表現の自由は、他者の権利を侵害しない限りにおいて、最大限尊重されるべきである。
      • 単純化: 他者の権利を侵害しないなら、表現の自由は尊重されるべきだ。
      • 英訳: Freedom of expression should be respected as much as possible, provided that it does not infringe on the rights of others.
  5. whether A or B,...
    • 機能: 「AであろうとBであろうと」と、いずれの選択肢でも結論が変わらないことを示す。
    • 応用例:
      • 原文: 芸術作品の価値は、それが大衆に理解されようとされまいと、それ自体に内在するものである。
      • 単純化: 芸術の価値は、大衆に理解されるかどうかに関わらず、作品自体にある。
      • 英訳: Whether a work of art is understood by the public or not, its value is inherent in the work itself.

D. 強調・焦点

  1. It is... that...
    • 機能: 文の一部を It isthat の間に入れて強調する分裂文。
    • 応用例:
      • 原文: 人間を他の動物から真に区別するのは、未来を構想し、それに向かって行動する能力である。
      • 単純化: 未来を構想する能力が、人間を他の動物と区別する。
      • 英訳: It is the ability to envision the future and act toward it that truly distinguishes humans from other animals.
  2. What is important is...
    • 機能: 「重要なのは…だ」と、文の焦点を明確にする擬似分裂文。
    • 応用例:
      • 原文: 問題なのは知識の量そのものではなく、それをいかに応用できるかということだ。
      • 単純化: 重要なのは知識の量ではない。それをどう応用するかだ。
      • 英訳: What is important is not the amount of knowledge itself, but how we can apply it.
  3. Not only A but also B
    • 機能: 文頭で用いると倒置が起こり、「AだけでなくBも」という内容を強調する。
    • 応用例:
      • 原文: その発見は科学界に衝撃を与えたばかりでなく、人々の世界観をも根底から覆した。
      • 単純化: その発見は科学界に衝撃を与え、人々の世界観も覆した。
      • 英訳: Not only did the discovery shock the scientific community, but it also fundamentally changed people's worldview.
  4. the very + 名詞
    • 機能: 「まさにその~」と、続く名詞を強調する。
    • 応用例:
      • 原文: 幸福の追求そのものが、皮肉にも我々を不幸にしているのかもしれない。
      • 単純化: 幸福を追求すること自体が、我々を不幸にしている。
      • 英訳: The very pursuit of happiness may, ironically, be what makes us unhappy.
  5. It is A, not B, that...
    • 機能: 「…なのはBではなくAだ」と、AをBと対比させて強く強調する。
    • 応用例:
      • 原文: 社会を前進させるのは、現状に満足する人々ではなく、常に疑問を抱き続ける人々である。
      • 単純化: 社会を前進させるのは、疑問を持つ人々だ。満足する人々ではない。
      • 英訳: It is those who constantly ask questions, not those who are content with the status quo, that drive society forward.

E. 抽象化・名詞化

  1. The fact that...
    • 機能: that 節全体を名詞句として扱い、文の主語や目的語にする。
    • 応用例:
      • 原文: 地球が温暖化しているという事実は、もはや科学者の間では議論の余地がない。
      • 単純化: 地球が温暖化していることは、事実だ。
      • 英訳: The fact that the Earth is warming is no longer debatable among scientists.
  2. 抽象名詞を主語にする(無生物主語構文)
    • 機能: 原因、手段、理由などを表す抽象名詞を主語にすることで、簡潔で客観的な文を作る。
    • 応用例:
      • 原文: 科学技術が進歩したおかげで、我々はかつてないほどの豊かさを享受できるようになった。
      • 単純化: 科学技術の進歩が、我々に豊かさをもたらした。
      • 英訳: Scientific progress has allowed us to enjoy an unprecedented level of prosperity.
  3. make it possible for O to do
    • 機能: it を形式目的語として用い、「Oが~することを可能にする」という意味を表す。
    • 応用例:
      • 原文: 交通網の発達は、人々がより広範囲にわたって移動し、交流することを可能にした。
      • 単純化: 交通網の発達のおかげで、人々は広範囲に移動できるようになった。
      • 英訳: The development of transportation networks made it possible for people to travel and interact over a wider area.
  4. enable O to do
    • 機能: 「Oに~することを可能にさせる」と、能力や機会を与えるニュアンスを表す。
    • 応用例:
      • 原文: 奨学金制度のおかげで、彼は経済的な心配をせずに学業に専念できた。
      • 単純化: 奨学金が、彼が学業に専念することを可能にした。
      • 英訳: The scholarship system enabled him to concentrate on his studies without financial worries.
  5. prevent O from doing
    • 機能: 「Oが~するのを妨げる」と、障害や制約を表す。
    • 応用例:
      • 原文: 既成概念に囚われていると、新しい発想を生み出すことはできない。
      • 単純化: 既成概念が、我々が新しい発想を生み出すのを妨げる。
      • 英訳: Preconceived notions prevent us from creating new ideas.
  6. The question is whether/how...
    • 機能: 「問題は~かどうか/どのように~かである」と、論点を名詞節として提示する。
    • 応用例:
      • 原文: 問題は、その技術を開発できるかどうかではなく、それを人類の幸福のために賢明に利用できるかどうかである。
      • 単純化: 問題は、技術開発の可否ではない。それを賢明に利用できるかだ。
      • 英訳: The question is not whether we can develop the technology, but whether we can use it wisely for the benefit of humanity.
  7. There is no denying that...
    • 機能: 「~ということは否定できない」と、議論の前提となる明白な事実を提示する。
    • 応用例:
      • 原文: 我々の日常生活が、地球環境に少なからず影響を与えていることは否定しようがない。
      • 単純化: 我々の生活が地球環境に影響を与えているのは事実だ。
      • 英訳: There is no denying that our daily lives have a considerable impact on the global environment.
  8. A is defined as B
    • 機能: 「AはBとして定義される」と、概念や用語の定義を明確にする。
    • 応用例:
      • 原文: 真の知性とは、単に多くの知識を持つことではなく、未知の状況に適応できる能力のことである。
      • 単純化: 真の知性の定義は、知識量ではなく、適応能力だ。
      • 英訳: True intelligence is defined not as merely possessing a great deal of knowledge, but as the ability to adapt to unknown situations.

第4部 過去10年間のレビュー:傾向とパターンの分析(2015-2024)

分析の概要

本セクションでは、Z会、河合塾、駿台といった主要な予備校や教育機関による年次分析報告書と、実際の過去問題に基づき、2015年から2024年までの和文英訳問題の変遷を時系列で分析する 。目的は、一貫したパターンと進化するトレンドの両方を特定することにある。

主要なテーマの変遷

年度別に見る特筆すべき課題

これらの分析から浮かび上がるのは、課題文の選定が、単なる言語能力の測定を超えた、大学側からの明確なシグナルであるという事実である。出題されるのは中立的で一般的な文章ではなく、哲学、社会学、芸術といった複雑なテーマに関する特定の思想家や作家の文章である 。これらの文章に適切に対処するには、言語スキルだけでなく、背景知識や抽象的な概念に取り組む知的な素養が不可欠となる。したがって、東京大学は、単に英語が得意な学生ではなく、広範な読書経験を持ち、知的に活発で、洗練された批判的思考が可能な学生を選抜しようとしている。このことは、最も効果的な長期戦略が、単なる英文法の訓練に留まらず、日本語と英語の両方で挑戦的なノンフィクションや評論を読む習慣を涵養することであることを強く示唆している。

第5部 知識から習熟へ:戦略的学習・実践計画

東大和文英訳の3ステップメソッド:実践的ワークフロー

本稿全体の分析を、試験本番で実践可能な明確なプロセスへと体系化する。

  1. ステップ1:解体・分析(国語フェーズ) 日本語の課題文を複数回読む。主語、目的語、主要な動詞を特定する。文の核心的な論理関係(例:原因結果、対比、条件)を見抜く。文体的な装飾は無視し、論理的な骨格に集中する。
  2. ステップ2:再構築・単純化(平易日本語フェーズ) 文の意味を、平易で直接的な日本語で書き換える。長い文は、必要に応じて短い論理単位に分割する。これは、複数の分析が指摘する、最も重要なステップである 。
  3. ステップ3:翻訳・洗練(英語フェーズ) 自らの「構文兵器庫」(第3部)の中から、ステップ1で特定した論理に最も適合するパターンを探す。翻訳対象は、原文ではなく、単純化された日本語である。文法的正確性、明瞭さ、自然な流れを確認する。

兵器庫の統合:年間学習計画

結びの言葉:東大受験生の心構え

東京大学の和文英訳は、解決不可能な難問ではない。それは、天賦の言語的才能よりも、体系的な思考、深い準備、そして知的な柔軟性に報いる、極めて論理的な問題である。本稿で提示した戦略的アプローチを通じて、この課題を不安の源から、自らの分析能力を証明する機会へと転換することが可能である。

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